====== Mroonga9.12 全文検索の構成 ======
Version 9.12 (MariaDB 10.4.12)
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関連記事
* [[mroonga:10.7:install|Mroonga9.12 インストール]]
* [[mroonga:10.7:tutorial|Mroonga9.12 検索チュートリアル]]
* Mroonga9.12 全文検索の構成
リンク
* https://mroonga.org/ja/docs/tutorial.html --- Mroongaチュートリアル
* https://qiita.com/mogulla3/items/23aaffbe29c4e600876d -- 検索エンジンまわりでの重要語リスト。全文検索の基礎用語が端的に纏まっています。初学者の方はまずこれをご一読下さい。
* https://blog.createfield.com/entry/2014/10/29/084941 --- Mroongaのテーブル設計について分かり易く纏まっています。
本編では、Mroonga公式サイトの[[https://mroonga.org/ja/docs/tutorial.html|チュートリアル]]を参考にしてMroongaの全文検索の構成について、トークナイザー(Tokenizer)、ノーマラーザー(Normalizer)、トークンフィルタ―(Token Filter) について説明したいと思います。
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===== 全文検索の仕組み =====
全文検索とは、複数の文書から特定の文字列を検索することを意味し、ここでは特に「インデックス(索引)型」の全文検索を指すものとします。インデックス型の全文検索は大きく分けて次の2つの部分から構成されています。
* 検索対象の文書登録
* キワードによる文書検索
Mroongaにおける文書検索については本編の「[[mroonga:10.7:tutorial|検索チュートリアル]]」を参照して下さい。本章では、文書登録について説明します。全文検索における文書登録はおおよそ次の流れで行われます:
- ノーマライズ (正規化)
- トーカナイズ (トークン化)
- トークンフィルタリング
- トークンを索引に登録する
Mroongaでは、これらの構成のほとんどをSQLのcreate文によって行います。以下ではノーマライズ、トーカナイズ、トークンフィルターについて説明します。
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===== ノーマライズ =====
ノーマライズ(Normalize)とは、日本語の場合、大文字と小文字、全角と半角、カタカナとひらがななどを統一して正規化する処理を指します。ノーマライズはトーカナイズの前処理として行われます。以下に正規化の例を挙げておきます。
^前^後^正規化^
|Apple|APPLE|小文字 => 大文字|
|ブラック|ブラック|半角 => 全角|
|リンゴ|りんご|カタカナ => ひらがな|
結論から先に言うと、ノーマライザーとしては [[https://groonga.org/ja/docs/reference/normalizers/normalizer_auto.html|NormalizerAuto]] を使用すべきです。以下、チュートリアルに従ってその理由を説明します。
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==== 日本語の文字セットと照合順序 ====
日本語の文字セットは UTF8 を使用することを前提にします。UTF8 の文字コードは次の2種類があります。
* ''utf8'' --- 文字ごとに最大3バイトを使用しBMP(基本多言語面)のみを含みます。
* ''utf8mb4'' --- 文字ごとに最大4バイトを使用しBMP(基本多言語面)に加え補助文字をサポートしています。
utf8は、''utf8mb3''と呼ばれることもあります。utf8mb4の補助文字としては[[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%90%BA%E5%B8%AF%E9%9B%BB%E8%A9%B1%E3%81%AE%E7%B5%B5%E6%96%87%E5%AD%97|絵文字]]が有名で、au、docomo、SoftBankなどそれぞれの機種によって絵文字がサポートされています。
UTF8 の代表的な照合順序には、以下のものがあります。
* utf8_bin --- バイナリ照合。文字コードが一致した場合のみマッチ。
* utf8_general_ci --- 大文字・小文字を区別しない(半角同士 及び 全角同士)
* utf8_unicode_ci --- 大文字・小文字、半角・全角、ひらがな・カタカナ、拗音/促音/濁音/半濁音と清音を区別しない
* utf8mb4_general_ci --- utf8_general_ci と同じ。
* utf8mb4_unicode_ci --- utf8_unicode_ci と同じ。
> ''_bin'' は ''binary''、''_ci'' は ''case insensitive''(大文字・小文字を区別しない) の略として照合順序の名称に使用される接尾語です。
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==== デフォルトのノーマライザー ====
Mroongaは、テーブルの照合順序に応じたノーマライザーを使用します。
^照合順序^ノーマライザー^
|utf8_bin|指定無し|
|utf8_general_ci|NormalizerMySQLGeneralCI|
|utf8mb4_general_ci|:::|
|utf8_unicode_ci|NormalizerMySQLUnicodeCI|
|utf8mb4_unicode_ci|:::|
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==== NormalizerMySQLUnicodeCI ====
以下の例では、utf8_unicode_ci の照合順序を指定することによって、デフォルトのノーマライザー(NormalizerMySQLUnicodeCI)を使用しています。
例
CREATE TABLE diaries_ci (
id INT PRIMARY KEY AUTO_INCREMENT,
content VARCHAR(255),
FULLTEXT INDEX (content)
) Engine=Mroonga DEFAULT CHARSET=utf8 COLLATE=utf8_unicode_ci;
INSERT INTO diaries_ci (content) VALUES ("びょういんの朝食はブラックコーヒーとパンです。");
どのようにノーマライズされるかは、Groonga の ''normalize'' コマンドで確認できます。
SELECT mroonga_command('normalize NormalizerMySQLUnicodeCI "びょういんの朝食はブラックコーヒーとパンです。"');
結果は以下のようになります:
{"normalized":"ひよういんの朝食はふらつくこーひーとはんてす。","types":[],"checks":[]}
拗音、促音、濁音、半濁音が全て清音に変換されています。従って以下の検索は全てヒットします。
SELECT * FROM diaries_ci WHERE MATCH (content) AGAINST ("+びよういん" IN BOOLEAN MODE);
SELECT * FROM diaries_ci WHERE MATCH (content) AGAINST ("+ふらつく" IN BOOLEAN MODE);
SELECT * FROM diaries_ci WHERE MATCH (content) AGAINST ("+はん" IN BOOLEAN MODE);
また、utf8_unicode_ci では半角・全角を区別しないので以下の検索もヒットします。
SELECT * FROM diaries_ci WHERE MATCH (content) AGAINST ("+ブラック" IN BOOLEAN MODE);
半角・全角の区別は良いとしても、「病院」と「美容院」、「ふらつく」と「ブラック」など拗音、促音、濁音、半濁音が清音と同じになるのは、言語的に「音」も「意味」も違うので問題が残る結果となっています。
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==== ノーマライザーの指定 ====
CREATE TABLE 文の中でノーマライザーを指定するには、''COMMENT'' を使用した以下の構文に従います:
FULLTEXT [INDEX] [インデックス名] (カラム1,...) COMMENT 'normalizer "ノーマライザー名"'
Mrrongaに組み込まれているノーマライザーについては、以下のGroongaのドキュメントを参照して下さい:
* https://groonga.org/ja/docs/reference/normalizers.html
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==== NormalizerAuto ====
以下は、ノーマラーザーとして ''NormalizerAuto'' を使用した例です:
CREATE TABLE diaries_auto (
id INT PRIMARY KEY AUTO_INCREMENT,
content VARCHAR(255),
FULLTEXT INDEX (content) COMMENT 'normalizer "NormalizerAuto"'
) Engine=Mroonga DEFAULT CHARSET=utf8 COLLATE=utf8_unicode_ci;
INSERT INTO diaries_auto (content) VALUES ("びょういんの朝食はブラックコーヒーとパンです。");
どのようにノーマライズされるかは、Groonga の ''normalize'' コマンドで確認できます。
SELECT mroonga_command('normalize NormalizerAuto "びょういんの朝食はブラックコーヒーとパンです。"');
結果は以下のようになります:
{"normalized":"びょういんの朝食はブラックコーヒーとパンです。","types":[],"checks":[]}
拗音、促音、濁音、半濁音はそのまま保存さえれて清音のままです。従って、''NormalizerMySQLUnicodeCI'' とは異なり以下の検索は全てヒットしません。
SELECT * FROM diaries_auto WHERE MATCH (content) AGAINST ("+びよういん" IN BOOLEAN MODE);
SELECT * FROM diaries_auto WHERE MATCH (content) AGAINST ("+ふらつく" IN BOOLEAN MODE);
SELECT * FROM diaries_auto WHERE MATCH (content) AGAINST ("+はん" IN BOOLEAN MODE);
但し、''NormalizerAuto'' は半角・全角を区別しないので以下の検索はヒットします。
SELECT * FROM diaries_auto WHERE MATCH (content) AGAINST ("+ブラック" IN BOOLEAN MODE);
このように、''NormalizerAuto'' では、半角・全角の区別をしないだけで、拗音、促音、濁音、半濁音と清音は区別されており、''NormalizerMySQLUnicodeCI'' よりは自然な検索結果になっているのが分かります。
''NormalizerAuto'' についての詳細は以下の Groonga のドキュメントをご覧ください:
* https://groonga.org/ja/docs/reference/normalizers/normalizer_auto.html
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===== トークナイザー(パーサ) =====
CREATE TABLE 文の中でトークナイザーを指定するには、COMMENT を使用した以下の構文に従います:
FULLTEXT [INDEX] [インデックス名] (カラム1,...) COMMENT 'tokenizer "トークナイザー名"'
トークナイザーは、MySQL(mariaDB) ではパーサと呼ばれています。MySQLでは、パーサの指定に別の構文( ''WITH PARSER'' )がありますが、Mroongaでは、利便性のために上記の構文が採用されています。
トークナイザーに指定できる主なものを以下に示します。全てのリストは、Mroongaの[[https://mroonga.org/ja/docs/tutorial/storage.html#how-to-specify-the-parser-for-full-text-search|ドキュメント]]を参照して下さい。
^トークナイザー^説明^
|none|トークナイズしません。|
|TokenDelimit|空白区切りでトークナイズします。|
|TokenRegexp|正規表現検索をサポートするトークナイザーです。|
|TokenUnigram|ユニグラム(1-Gram)でトークナイズします。|
|TokenBigram|バイグラム(2-Gram)でトークナイズします。|
|TokenTrigram|トリグラム(3-Gram)でトークナイズします。|
|TokenMecab|MeCabを用いてトークナイズします。|
デフォルトのパーサは以下で確認できます:
SHOW VARIABLES LIKE 'mroonga_default_tokenizer';
デフォルトのトークナイザーはビルド時や ''my.cnf'' ( Windowsでは''my.ini'' )で指定できます。このオプションを指定しないときは ''TokenBigram'' になります。my.cnf では以下のようにして指定します。
my.cnf:
[mysqld]
mroonga_default_tokenizer=TokenMecab
\\
==== TokenMecab ====
本編で使用している MariaDB with Mroonga (Windows版バイナリ) ではパーサとして形態素解析エンジンの Mecab がバンドルされていて直ぐに利用することができます。Mecab の本体は以下に配置されています:
{XAMPP-Folder}/mysql/bin/mecab.exe
Mecabの設定ファイル mecabrc の配置場所と内容を以下の示します:
''{XAMPP-Folder}/mysql/etc/mecabrc''
; Configuration file of MeCab
dicdir = $(rcpath)\..\share\mecab\dic\naist-jdic
mecabrc では形態素解析で使用する辞書が設定されています。初期設定の辞書としては、Mroongaにバンドルされている [[https://ja.osdn.net/projects/naist-jdic/|naist-jdic]] が指定されています。他の辞書に変えるときは、上の ''dicdir'' を変更するだけです。
以下は「[[mroonga:10.7:tutorial|検索チュートリアル]]」で示した例を、Mecabのパーサに替えたものです。
CREATE TABLE diaries_mecab (
id INT PRIMARY KEY AUTO_INCREMENT,
content VARCHAR(255),
FULLTEXT INDEX (content) COMMENT 'tokenizer "TokenMecab"'
) ENGINE = Mroonga COLLATE utf8_unicode_ci;
INSERT INTO diaries_mecab (content) VALUES ("今日の天気は晴れでしょう。");
INSERT INTO diaries_mecab (content) VALUES ("今日の天気は雨でしょう。");
INSERT INTO diaries_mecab (content) VALUES ("明日の東京都の天気は晴れでしょう。");
INSERT INTO diaries_mecab (content) VALUES ("明日の京都の天気は雨でしょう。");
以下の検索を実行します:
SELECT * FROM diaries_mecab WHERE MATCH(content) AGAINST('明日 京都 天気');
結果は以下のように出力されます:
明日の京都の天気は雨でしょう。
検索チュートリアルの[[mroonga:10.7:tutorial#自然言語検索|例]]では、トークナイザーがバイグラム (TokenBigram) だったので、「明日の東京都の天気は晴れでしょう。」にもヒットしてしまいましたが、Mecabの場合は形態素解析により「東京都」と「京都」を区別するのでこのような現象は起こりません。
「明日の東京都の天気は晴れでしょう。」がバイグラムとMecabとでどのようにトークン化をされるかを確認するには、以下のようにSELECT文からGroongaコマンドを使います。
バイグラムの場合:
SELECT mroonga_command('tokenize TokenBigram "明日の東京都の天気は晴れでしょう。"');
[
{"value":"明日","position":0,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"日の","position":1,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"の東","position":2,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"東京","position":3,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"京都","position":4,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"都の","position":5,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"の天","position":6,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"天気","position":7,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"気は","position":8,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"は晴","position":9,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"晴れ","position":10,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"れで","position":11,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"でし","position":12,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"しょ","position":13,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"ょう","position":14,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"う。","position":15,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"。","position":16,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false}
]
Mecabの場合:
SELECT mroonga_command('tokenize TokenMecab "明日の東京都の天気は晴れでしょう。"');
[
{"value":"明日","position":0,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"の","position":1,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"東京","position":2,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"都","position":3,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"の","position":4,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"天気","position":5,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"は","position":6,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"晴れ","position":7,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"でしょ","position":8,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"う","position":9,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false},
{"value":"。","position":10,"force_prefix":false,"force_prefix_search":false}]
]
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===== トークンフィルター =====
Mroongaではトークン化の後に、トークンに所定の処理を行うトークンフィルターを指定することができます。トークンフィルターを CREATE TABLE 文の中で指定するには、''COMMENT'' を使用した以下の構文を使用します:
FULLTEXT [INDEX] [インデックス名] (カラム1,...) COMMENT 'token_filters "フィルター名"'
以下の3つの組込みフィルターを使用できます。詳しくはGroongaの[[https://groonga.org/ja/docs/reference/token_filters.html|ドキュメント]]を参照して下さい。
* [[https://groonga.org/ja/docs/reference/token_filters/token_filter_nfkc100.html|TokenFilterNFKC100]] \\ NormalizerNFKC100 と同じ正規化をトークン化後に使用できます。\\
* [[https://groonga.org/ja/docs/reference/token_filters/token_filter_stem.html|TokenFilterStem]] \\ トークンをステミングします(語形の変化を取り除き、同一の単語表現に変換する処理)。\\
* [[https://groonga.org/ja/docs/reference/token_filters/token_filter_stop_word.html|TokenFilterStopWord]] \\ トークンからストップワードを除去します。
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