Version 7.2.22 — y2sunlight 2020-11-20
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php7.3で動作するZeroMQのWinodwsバイナリはまだ公式には公開されていません。
(2020/11/23現在)
PHPには拡張モジュールというものがあります。これはPHPの機能を拡張する為のもので、PHPエクステンションとも言われています。
XAMPPではいくつかの拡張モジュールがDLLとして同封されていますが、他のリポジトリからダウンロードすることも出来ます。拡張モジュールのリポジトリとしては PECL (ピクル) が有名です。PECL は PEAR 同様に pecl コマンドを使ってインストールする方法が提供されていますが、Winodwsの場合は php.ini を編集し、手動でDLLを設置する方が一般的です。
本章では、PECL から拡張モジュールをインストールする方法を、ZeroMQを例に説明します。
ZeroMQ は、高性能の非同期メッセージングライブラリです。スペルはZMQ 、0MQとも書きます。
ZeroMQ は、TCP、プロセス内、プロセス間、マルチキャスト、WebSocketなどの様々なトランスポートで使用でき、pub/sub、request/reply、client/serverなどの一般的なメッセージング方式をサポートしいます。詳細はZeroMQのドキュメントをご覧ください。
XAMPP 7.2.22 では ZeroMQ はDLLが同封されていないので、PECL からダウンロードする必要があります。
PECL の ZeroMQ のダウンロードサイト( http://pecl.php.net/package/zmq/1.1.3/windows )にアクセスします。

■ [DLL List] から [7.2 Thread Safe (TS) x64]を選択し、以下のファイルをダウンロードします。
php_zmq-1.1.3-7.2-ts-vc15-x64.zip
ダウンロードしたファイルを解凍します。
COPYING.LESSER.LIBZMQ libzmq.dll libzmq.pdb LICENSE LICENSE.LIBSODIUM php_zmq.dll php_zmq.pdb README.md
php_zmq.dll を以下にコピーします:
{XAMPP Install-Folder}\php\ext\php_zmq.dll
libzmq.dlll を以下にコピーします:
{XAMPP Install-Folder}\php\libzmq.dlll
php.ini の中に、extensionディレクティブを使って php_zmq.dll を拡張モジュールとして追加します。extension の使い方は、本編の「PHP7.2 intlのインストール」を参照して下さい。
{XAMPP Install Folder}\php\php.ini
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ; Dynamic Extensions ; ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ... ;ZQM php bainding extension=zmq
extension=zmq を書く場所はどこでも良いですが、ここでは Dynamic Extensions と書かれている場所の最後尾に追加しました。
外部からダウンロードした拡張モジュールのDLLを手動でインストールする場合は、設置場所を間違えたり、依存関係のある他のモジュールが不足していたりする場合が少なくありません。従って、拡張モジュールを使用する前に、正常にロードされているか否かを確認しておきます。
php.exeのあるフォルダに移動します (ここでは D:\usr\xampp7.2.22\php とします)。deplister を使って php_zmq.dll の依存関係を確認してみます。deplister は windowsの実行モジュールの依存関係をチェックするツールで、XAMPP では php.exe と一緒に配布されています。
D:\usr\xampp7.2.22\php> deplister ext\php_zmq.dll
php7ts.dll,OK
libzmq.dll,OK
KERNEL32.dll,OK
VCRUNTIME140.dll,OK
api-ms-win-crt-heap-l1-1-0.dll,OK
api-ms-win-crt-runtime-l1-1-0.dll,OK
全てにOKが表示されていたら依存しているモジュールは全て揃っていることが分かります。次に、正しくロードできているか否かを php -m を使って確認します。
D:\usr\xampp7.2.22\php> php -m
[PHP Modules]
...
zmq
...
[PHP Modules] の中に zmq が含まれていたら正常にロードできています。
Apatchを再起動して下さい。
EclipseなどのIDEで、ZeroMQ のコード補完ができない場合は、スタブを設置して使用します。スタブは以下のURLで公開されています。
プロジェクトフォルダに以下のcomposer.jsonを設置します。既に composer.json がある場合は、マージして下さい。
{
"require-dev": {
"moriony/php-zmq-stubs": "dev-master"
}
}
コマンドプロンプトで次のコマンドを実行します:
composer install --dev
Eclipseの場合は、ここで設置した {Project-Folder}/vendor/moriony/php-zmq-stubs をビルトパスに追加して下さい。
ZeroMQのインストールが出来たので、request-reply パターンのソケットの動作テストを行ってみましょう。
サーバーは GitHub(zeromq/php-zmq) のサンプルを使用します。
<?php /* The server waits for messages from the client and echoes back the received message */ $server = new ZMQSocket(new ZMQContext(), ZMQ::SOCKET_REP); $server->bind("tcp://127.0.0.1:5555"); /* Loop receiving and echoing back */ while ($message = $server->recv()) { echo "Got message: $message\n"; /* echo back the message */ $server->send($message); }
ZMQSocket のコンストラクターで ソケットタイプ ZMQ::SOCKET_REP を使用している点に注意して下さい。recv() でクライアントからのメッセージを待ち、受け取ると直ぐに、同じものをエコー( send($message) )します。
クライアントは、githubの例題には適当なものがなかったので、以下のように作りました。
<?php /* The client sends message to the server */ $message = count($argv)>1 ? $argv[1] : 'Hello'; /* Create a socket */ $queue = new ZMQSocket(new ZMQContext(), ZMQ::SOCKET_REQ); $queue->connect("tcp://127.0.0.1:5555"); $queue->setSockOpt (ZMQ::SOCKOPT_LINGER, 1000); $queue->send($message); echo $queue->recv();
ZMQSocket のコンストラクターで ソケットタイプ ZMQ::SOCKET_REQ を使用している点(サーバー側はZMQ::SOCKET_REPでした)に注意して下さい。起動されると直ぐに、メッセージを send() して、recv() でサーバーからのメッセージを待ちます。
ZeroMQの特徴なのですが、send() はサーバーが起動するまでリトライを続けます。
コードが出来たら、コマンドプロンプトを2つ起動し、プロジェクトフォルダに移動してクライアントを起動します。
> php simple-client.php
クライアントは、サーバーが起動しエコーバックされるのを待ちます。
別のコマンドプロンプトからサーバーを起動します。
> php simple-server.php
Got message: Hello
サーバーは、起動直後、クライアントにメッセージを返し、クライアントは終了します。
もう一度、クライアントを起動します(今度は「Hi!」と送ってみましょう)。
> php simple-client.php Hi! Hi!
サーバーが起動済なので、エコーは直ぐに返ってきます。
request-reply パターンは、クライアントをサービスに接続します。これは、リモートプロシージャコールと同じです。同期(REQ 及び REP ソケットタイプ)と非同期ソケットタイプ(DEALER 及び ROUTER ソケットタイプ)の2つの基本的な種類があり、ここでは同期タイプを使用しています。詳しくは以下のドキュメントをご覧ください。